今回は、盆栽家 森前誠二氏と、道場六三郎氏の実娘であり道場六三郎事務所の代表を勤める宮崎敬子さんにお話を伺いました。森前氏の、盆栽に関しての心意気やクリエイティブに関する考え方、また道場氏の料理と盆栽と空間について、お二人から興味深いお話を聴く事ができました。4月のルーシー・リー回顧展時の展示への意気込みもお伺いしています


森前誠二さん(以下 森前):森前誠二と申します。
私の家が、500年くらい造園をやっておりまして、昨年から18代目「作十郎」を襲名いたしました。日光の世界遺産の「輪王寺」の庭を江戸のはじめより預かっております。盆栽を初めて36年目、本の執筆、展示会など、活動させていただいております。
「懐食みちば」さんとは銀座にお店を作った頃からのお付き合いで、ぜひ、盆栽を室内に、食の文化と合わせて飾りたい。というお話を頂いたのが始まりでしたね。
理由を訪ねると、「本来、和食というものは、お庭を前に、四季を愛でながら食を楽しんで戴くものでしたが、昨今の日本では、特に都心では難しい。せめて、皆さんがお食事をとるところに、日本の自然の移ろいを、まるでお庭にいる様に盆栽を飾っていただけたら。」と、そのお言葉を頂いたので、それでは、という想いで今年で10年。たくさんたくさん、飾らせて頂きました。とても勉強になりましたね。

宮崎敬子さん(以下 宮崎):ありがとうございます。宮崎敬子です。
「懐食みちば」は今年でちょうどオープン10周年となりますが、オープン前の設計段階で、近くにお店を出してらした森前さんの盆栽を拝見しておりました。そこで、父が言っていた「京都の料理屋には美しいお庭がある。本当はそうしたいのだけど、銀座だとねえ」と申しておりましたのが、ピンと重なりまして、是非、とお願いすることにいたしました。



宮崎:そういえば、森前さんはイギリスでも盆栽を展示されたとお伺いしましたが?

森前:ちょうど去年の4月までの半年間、「JAPAN CAR」と言う日本車を紹介する企画展がロンドンのサイエンスミュージアムで開かれていたのですが、盆栽が「日本のデザイン」を象徴していると言う事で、展示の導入部の最初の部屋をサインスミュージアムの一室をお預かりして、入り口に絶えず10点ほど飾りました。そしてそのための、バックヤードとして、盆栽が痛まないように管理する場所を、世界遺産のキューガーデンが申し出てくれました。

宮崎:サイエンスミュージアムでの展示は、真っ暗な中に浮かび上がる盆栽の演出にとても驚きました。

森前:人の気配をさせず、100年生きる盆栽の線と命を感じれるよう、盆栽と1本1本と人とを対峙させたいと考えたのです。日本では床の間などに飾るのが本来ですが、海外では「日本のモダンアート」としてとらえられることが多いのです。盆栽は「造る」のではなく、盆栽と対峙して、盆栽と対話して、その子の一番願っていることはなんだろう、ということを感じながら「整える」のです。あくまで私達は、盆栽の側にいる「守人」です。無駄なものをとる。と。
「懐食みちば」の食事、空間と盆栽について、道場さんが面白いことをおっしゃたんです。食事は、食べ続けるものではなく、人とのふれあいがあり、歓談があり、そこに日常がある。それが楽しい。そのときに是非、盆栽は、「箸休めであってほしい」と。とても、いい言葉ですよね。ふと、食事の合間に目に入る、梅や桜「・・・そういえば、もう、そんな季節だね。」と。「「100年も生きてるよ、すごいねえ。」と。

盆栽と料理は、とても共通するところがあります。「梅は、花のときわずか一週間しか見れないからうれしい。」という話を聴いた事があります。その為350日を一生懸命手入れする。だから嬉しいんだと。料理も、旬のものを旬に頂く。これが嬉しいですよね。料理も盆栽も、命あるものならでは、ですよね。

盆栽の一番の楽しみ方はじっと見る事。ふと、見つめるんです。
すると、"今"を、けなげに"生きて"いる。「こう見てほしい!」というものは無いのです。それぞれの方の人生観で、心の中の「日本」という国のDNAに、ぐっとくるところがあるはずです。日本のモダン。古典をやっているのですが、モダン、なんです。



宮崎:食事の最中に、声に出さずとも、お客様がふっと眺めてくださっている姿が嬉しいですね。

森前:お客様の、ふっとした安らぎ、ほんの一瞬のやすらぎであれれば、それが嬉しいです。こちらでは、普段盆栽には使用しない植物を盆栽にしてみたり、とても挑戦させていただきました。ルーシー・リーの陶芸作品とのコラボレーションには、初めは困惑したのですが、植物のそのままの自然の線、命の旋律を大切にした盆栽は、先生の作品とケンカしないんです。先生の、とても静かな静かな、凛とした存在に、ケンカしない。まけない。自然の線とはお互いが助け合うんですね。人の気配、存在が見えない盆栽。盆栽から聞き出す。そんな作品を作りたいです。ルーシー先生の作品の中にも、私は同じものを感じますね。「空(くう)」になるまで、ご自分を高めてらしたんでしょうね。

宮崎:私は作品を拝見したときに、洋陶なのに、床の間に置ける作品だと感じました。そこで、ひょっとしたら盆栽と並べていただいても面白いかもしれない、とお願いさせたいただいたのです。
ルーシー・リー先生は、とても頑固な方だと伺いました。作品を生み出す、真剣にやり続けていたら、頑固になるしかないんじゃないかと思いました。

森前:よく、盆栽なんて、植物を小さなところにいれてしまってかわいそうだ、とおっしゃる方がいるんです。 でも、違う。盆栽はその子に本当に必要な器を考え、水も一番いいタイミングをじっと待って与えるそれが一番いい環境なんです。一汁一菜のように育てているのです。
懐食みちばさんに飾らせていただいている盆栽を見て、盆栽に興味を持っていただくことが多々ありました。「懐食みちば」に盆栽を飾り始めて10年。ここ銀座にも「盆栽」というものが根づいた。そう感じています。
4月のルーシー・リー展の際には、その器たちがはるばる日本へ来たように、 「海を渡ってきた風景」を、盆栽でお見せしたいと思っています。 一度くらいは、しだれ桜の下にルーシー先生の作品を飾りたい。 楽しみにしていてください。

宮崎:今年は「懐食みちば」の10周年、お祭りです。ですので、お客様にも、ほんの少しはじけるようなちょっと楽しい気分を味わっていただけるものをちりばめてお出迎えしたいと思っています。

※敬称は省略させて頂いております。

プロフィール

森前誠二 盆栽家
500年くらい盆栽と造園の家に育つ。昨年から18代目「作十郎」を襲名。日光の世界遺産の「輪王寺」の庭を江戸の始めより預かっている。
盆栽36年目、本を執筆、展示会など、幅広く活動中。


宮崎敬子 道場六三郎事務所代表
道場六三郎事務所の代表。
父は道場六三郎。
http://www.michiba.com/



銀座で盆栽による空間演出


懐食みちば ルーシー・リー展

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